ロマンチック街道の終点はバイエルン王の夢の世界だった
ノイシュヴァンシュタイン
この城は、王や騎士たちが活躍する時代が過ぎ去った1869年、第4代バイエルン王ルードヴィヒ2世の命により着工されました。
18歳の若さで国王の座についた彼には、人生経験も政治的な経験もありませんでした。
プロイセンとの戦争で敗れた彼は、多額の賠償金を請求されてしまい、バイエルン王国は権威を失っていくことになるのです。
とにかく芸術を愛しており、中世の騎士の姿や考え方、その伝説に対して憧れすら抱いていたルードヴィヒ2世。
そんな彼が、やがて争いや政治から逃れ、自分だけのファンタジーワールドに生きようとすることも無理はないことだったのかもしれません。
そんな彼の描いた世界観は、夜中に伝説の人物の格好をしてソリに乗る、などという奇行に表れていたともいえるでしょう。
そのルードヴィヒ2世が自分の描く理想的な世界として建てられたのがノイシュバンシュタインです。
ちなみに、彼のファンタジー感を象徴するかのように、後にこの城はシンデレラ城や眠れる森の美女の城のモデルにもなったという説があります。
残念なことに、彼が亡くなった1886年、城の工事は中断されてしまいます。
財政難にあえいでいたドイツには余力がなく、工事を継続させることはできず、現在に至りました。
そのため、今でも多くの箇所が未完成のままとなっているのです。
しかし、そうした中にも彼の思いはしっかりと残されているのが、この城の魅力ともいえるでしょう。
ワーグナーの音楽に心酔していたルードヴィヒ2世は、そのオペラを上演するためだけに「歌人の間」を造りました。
城内の至るところ、寝室や居室などにはそうしたオペラを象徴した壁画が描かれています。
中でも「ローエングリン」や「パルジファル」が有名な作品として知られています。
妄想の世界に耽ることでも知られるルードヴィヒ2世は、そのために人工の洞窟まで造らせたといいます。
そしてその発想こそ「タンホイザー」からヒントを得たといわれています。
ただ、ファンタジーな世界観だけが描き出されていたわけではありません。
その権力を象徴するかのように、王座の間の天井は一面黄金製!重さが900kgを超えるシャンデリアもあり、権力の一端も見え隠れしているのです。
白鳥城とも呼ばれるこのノイシュヴァンシュタインですが、その名のとおり華麗で美しい佇まいでも知られています。
そしてもっとも驚くのは、この城を建てたのは建築家ではなく、彼が愛してやまなかったオペラの舞台装置や美術を手掛ける画家だったこと!
そのため、構造的なことよりも、彼の描いていた世界観のほうが強く反映された城として、世に送り出されることになったのです。
随所に彼のファンタジックな片鱗を残しているノイシュヴァンシュタインの中で、もっとも美しいと評判なのがマリエン橋。
深い谷の間にかかる吊り橋なので揺れると怖いですが、断崖に悠然とそびえ立つ城の姿を、周りの風景とともに一枚の絵画のように見ることができる絶景スポットです。
橋の上から城の全景を眺めることもでき、白鳥城の佇まいを体感できることでしょう。
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ホーエンシュヴァンガウ城
ルードウィッヒ2世に関連して見ておきたい城として、ホーエンシュヴァンガウ城があります。
ホーエンシュヴァンガウ城はノイシュヴァンシュタイン城から歩いて行ける距離にあり、麓のチケットセンターで共通チケットを購入できます。
この城のある場所は「白鳥の里」という地名で、オペラ「白鳥の騎士(ローエングリン)伝説」ゆかりの地でした。
ルードヴィヒ2世の父親は古城であったこの城を改築し、19世紀ドイツ・ロマン主義に傾倒していたことから、壁画にも多くのゲルマンの騎士伝説が描かれています。
そして、幼き日をこの城で過ごしたルードヴィヒ2世がその騎士伝説に影響を受けていったと言われています。
リンダーホーフ城
ルードヴィヒ2世が存命中に唯一完成したリンダーホーフ城は、バイエルン州南西の森の中にあります。
この城は、完成後に彼が長い期間過ごしたことでも知られています。
ヴェルサイユ宮殿内の大トリアノン宮殿を手本に建てられたルネサンス様式の建物ではあるのですが、ルードヴィヒ2世の手によってバロック様式の装飾が加えられています。
そのため、彼の作品であるというとらえ方も強くあるようです。
城内には権力を誇ったルイ14世とその息子であるルイ15世、ポンパドゥール夫人やマリー・アントワネットの像が置かれており、彼は像に向かって、これらが生きているかのように挨拶したり話しかけたりしたといわれています。
こうした時間は彼にとってとても大切なものだったため、使用人たちがその妨げとならないよう、城には工夫がされています。
その代表的なものが、人の出入りの多い食事の準備を1階で行い、用意が整ったテーブルをそのまま2階のルードヴィヒ2世が食事をする部屋へとせり上げる装置です。
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古城巡りの魅力
このように、彼のファンタジー感というものを誕生させ、育み、創作させたといえるのがこの三つの城なのです。
ヨーロッパの古城巡りというと、タペストリーや建築様式が着目されがちですが、その城を建てた人物について知ることも、観光スポットの魅力を知ることになりそうですね。
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