さぁ念願の海外旅行!と、国際線の航空券を購入した際に「空港諸税はわかるけれど、表示されていた金額以外に加算されてるこの金額は?」と思われた経験があるのではないでしょうか。
せっかく格安航空券を見つけた!と思っても、その航空運賃と同じくらいの金額が加算されて想定外の金額になっていたり…
その正体こそが「燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)」です。
言葉自体は聞いたことがあったり、なんとなく知っていたつもりだけど、そもそもこの燃油サーチャージって何?
この記事では、詳しくは知らないものの、今さら聞くに聞けない燃油サーチャージについてご紹介していきます。
そもそも燃油サーチャージって?
航空券を購入する際に支払う金額には、元々航空機の運航にかかる諸費用(コスト)は含まれたものになっています。
もちろん航空機の燃料代についても、この諸費用のひとつです。
1990年代以降、中東地域を中心とした原油産油国の状況が悪化し、原油価格が急激に高騰。
これにより、1970年代のオイルショック以降に海運業で導入していた「燃料代高騰分の追加費用負担=燃油サーチャージ」が、航空業界でも導入されました。
日本の航空会社においては、2005年より導入開始しています。
燃油サーチャージとともに、航空券代金本体とは別に加算されるものに「航空保険特別料金(航空保険料)」があります。
こちらは、2001年9月に発生した「アメリカ同時多発テロ」に起因するものです。
航空会社が保険会社へ支払っていた保険料の引き上げに伴って、その増額や保安強化に掛かる費用の一部を搭乗旅客にも負担してもらうもの。
燃油サーチャージと比べて金額が比較的少額なことや、現在では廃止している航空会社もあり、あまり知られてはいないものの、日本円では数百円程度が航空券を購入した場合に別途加算されています。
①なぜ必要なのか、その仕組み。
本来は航空運賃にあらかじめ組み込まれていた燃料代ですが、原油価格の高騰は航空会社の想定を大幅に上回りました。
そのため、航空便の適正な運航を維持するべく、想定外の燃料費高騰分相当を航空運賃に上乗せする燃油サーチャージを導入しています。
当初は、原油価格の高騰が一時的なものであると想定されていたため、あくまで臨時的措置として導入されました。
冒頭でも書いた通り、本来は燃料費も航空運賃に含まれるものです。
しかし、原油価格の不安定な変動に柔軟に対応するため、金額が路線や航空会社により一定ではないため、利用者にわかりやすく提示する必要性から、通常の航空運賃本体とは別に加算する方式を採用しています。
②どうやって決めているのか?
燃油サーチャージの金額は、搭乗(利用)する日付や期間に因らず、航空券を購入(発券)した時点の設定額に因ります。
また、設定金額は区間(地域)によって、航空会社によっても異なります。
例えば、9月に搭乗するアメリカ行き航空券を購入する場合、JAL利用航空券を7月に購入すると66,800円ですが、8月に購入すれば57,600円となり、9,200円の差があります。(上表参照)
日本の航空会社の場合は、およそ2ヶ月ごとの申請時点における、直近2ヶ月間のシンガポールで取引されるケロシン(ジェット燃料)市況価格の平均に応じて算出されます。
1バレル当たりの米ドルを日本円に換算し、その金額をもとに航空会社が定めた適用条件に当てはめて、燃油サーチャージの額を決定しています。
なお、この金額が6,000円を下回った場合には、燃油サーチャージは適用されない条件となっています。
実際のところ過去2009年に一度、廃止された時期もありましたが、現在も燃油サーチャージの設定は継続しています。
〝燃油サーチャージの金額は、搭乗(利用)する時期や期間に因らず、航空券を購入(発券)した時点の設定額に因る″と書きました。
では、航空券の直接購入と異なり、旅行会社の企画旅行(いわゆるパッケージツアー)などを利用する場合にはどのようになっているのか?
燃油サーチャージ導入当初は、変動が不定期だったことや、募集時に利用航空会社が確定していない旅行契約もあり、燃油サーチャージの「目安額」を提示して、確定後に別途お支払い頂いてました。しかし、この方式では最終的な支払総額がわかりにくいため現在は、企画旅行においてはあらかじめ旅行代金に燃油サーチャージを含めた「総額表示」を行い、旅行契約が成立した後に、航空会社が定める燃油サーチャージの額が増減しても、原則として差額徴収または返金は行わない。
と、2008年6月に国土交通省の通達により定められています。
③国際線だけ対象?実は国内線にもある。
ここまで国際線の燃油サーチャージについて、航空会社によって異なることなどを解説してきました。
「国内線の航空機も燃料代はかかるのになぜ国際線だけ?」と思われるかもしれません。
実は国内線にも燃油サーチャージはありますが、多くは国際線に対して近距離であるため、差額分は既に運賃に含めた状態であったり、国際線に接続した国内線区間の場合には、国際線の燃油サーチャージに含めていることがほとんどです。
欧米など国内線でも長距離になる場合には、国内線でも燃油サーチャージを設定している航空会社もあります。
また、日本国内でも一部の航空会社において設定している場合があります。
全員必要?子供も大人と同額!場合によっては幼児も対象!?
燃油サーチャージは搭乗する旅客ごとに支払う必要があります。
設定された金額は本体の航空運賃とは異なり、大人も子供(小児)も同額です。
なお、国際線の場合2歳未満(国内線では3歳未満)の幼児は燃油サーチャージは掛かりません。
ただし幼児でも座席を使用する場合には、座席使用時の運賃とは別に大人と同額の燃油サーチャージが必要です。
変更・取消と発券後の変動
もし、購入済の航空券を使用前にキャンセル(取消)した場合や、内容を変更したらどうなる?
予約後や発券後に燃油サーチャージの金額に変動があった場合はどうなるだろう?と心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
※以下、航空会社の正規割引航空券(PEX)を軸に説明していますので、航空券の種類によっては条件や規定が異なる場合もあります。
①もし、キャンセル(取消)・変更したらどうなるのか?
旅行の取りやめ等によって、購入した使用前の航空券をキャンセル(取消)して、払い戻しの手続きを行う場合、この燃油サーチャージは返金されるのかどうか気になるところだと思います。
原則として、使用前の航空券に関する燃油サーチャージについては、全額払い戻しとなります。
そのため「発券後払い戻し不可」といった条件の厳しい航空券の場合でも、空港諸税などとともに、この燃油サーチャージも払い戻しされるので、万が一購入した航空券が不要となった場合にも、払い戻しの申請を行いましょう。
※航空会社によって特別条件がある航空券の場合には、この限りではないケースもありますので、詳しくは航空券を予約・購入する際にしっかりとご確認ください。
また、発券後に日程変更や、行先の変更を行った場合はどうなるのか?
この場合は航空券の再発券が必要となり、当初購入時の基準ではなく、変更・再発券時に設定されている燃油サーチャージの金額が適用になるため、もし設定額が増額されていた場合には差額の支払いが必要となります。
※減額となった場合には返金されません。
②予約・発券後に変動した場合の差額は?
年末年始の旅行を計画し、6月のうちに早めに航空券を購入したとします。
その際に航空運賃とともに燃油サーチャージ6,200円を支払いました。
発券後、8月に利用予定の航空会社から燃油サーチャージ改定の発表があり、8,500円に増額されたとします。
この場合、差額の2,300円を追加で支払わなければならないのでしょうか?
早期購入割引運賃(いわゆる早割)や、販売期間限定の特別キャンペーンなどで、早い段階で数か月先の航空券を購入することもあると思います。
この場合は、燃油サーチャージの金額は「発券時の設定基準による」ため、 発券後に変動した場合には①とは異なり、差額の調整は行われません。
※増額された場合の追加負担はありませんが、減額された場合の返金もありません。
※予約・購入後、発券までの間に変動した場合にはこの限りではありません。
※一部の航空券については、
少しでも節約・お得にする方法
ここまで、そもそも燃油サーチャージとは何なのか?どういった仕組みなのか?などをご紹介してきました。
購入する時期や方面、航空会社によっても異なることなどお判りいただけたと思います。
ここで、何かと高額になりがちな海外旅行を少しでも節約してお得に利用する方法をご紹介します。
①燃油サーチャージ不要な航空会社を利用する
同じ区間であれば、航空会社は違っても実際に飛ぶ距離は同じです。
航空会社によってその金額には差があるとはいえ、最終的はほぼ横並びになることがほとんど。
しかし、大手航空会社の中には「燃油サーチャージ不要」としている会社もあります。
~長距離でも燃油サーチャージ不要の航空会社一例~
ニュージーランド航空、カンタス航空、カタール航空、シンガポール航空、スリランカ航空など(※2023年8月現在)
また、LCC(ローコストキャリア)などの格安航空会社では「燃油サーチャージ不要」も多く、 本体の航空運賃自体もリーズナブルなので、お得に海外旅行を楽しむことができます。
特にJALグループのLCC「ZIPAIR」は、成田を起点にバンコク・シンガポールなどの中距離東南アジアのほか、ハワイ・ホノルル、アメリカ西海岸のロサンゼルス・サンフランシスコ・サンノゼといった太平洋路線があります。
同じく日系LCCでANAグループの「air japan」も、成田を起点にソウルの他、バンコク・シンガポールの中距離東南アジアに路線を開設。
ANAグループの「Peach」も、成田・羽田発では台北やソウルなど近距離アジア路線がメインですが、関西からは東南アジアのバンコク線を運航しています。
東南アジアのLCC草分け的存在のエアアジアグループのエアアジアXやタイ・エアアジアXも、当初より燃油サーチャージ不要としていたので、マレーシアやタイへの旅行が非常にリーズナブルで、コストパフォーマンスの良さを実感できるでしょう。
※すべてのLCCが燃油サーチャージ不要というわけではありませんので、予約時には支払金額の内訳等にてお確かめください。
②原油価格の動向をチェックする
導入当初は、適用期間や発表時期などがランダムだった燃油サーチャージですが、現在は多くの航空会社が設定期間を2か月とし、適用額発表時期もおおむね適用期間の2か月前と設定しています。
そのため、いつ改定されるのか、いつ頃発表されるのか、そのタイミングが以前よりわかりやすくなりました。
燃油サーチャージは大元の原油価格の変動に起因するため、原油価格の長期的な動向をチェックすることで、今後の動向を図ることができます。
それにより、旅行や渡航の時期・航空券を利用するのが数か月先の場合には、今の設定額で購入するのが良いか、原油価格に値下がりの兆候がある場合には、翌月以降が良いのかなどの判断ができるでしょう。
航空券本体価格も、以前のような平日・週末、閑散期・繁忙期による値段の差だけでなく、需要予測に基づく変動制運賃(ダイナミックプライシング)の導入によって、日々変わりますので、 燃油サーチャージを含めた総額で比較することが重要です。
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