バリ島はインドネシア共和国の島の一つで、南部にある小スタンダ列島の西側に位置します。面積は約5,600平方キロメートル、人口は約400万人（2010年時点）です。神々の島とも称されるこの島には、バリ・ヒンドゥーと呼ばれる信仰の形をとっている人々が多く存在します。これはインド仏教とヒンドゥー教が組み合わされた宗教で、それに伴う習慣は現在でも多くの場面で見られます。1990年代に入ってからは、労働を目的としたイスラム教徒が多く在住するようになりました。
バリ・ヒンドゥーが信仰するアグン山をはじめ、バトゥール山などさまざまな火山を有しているのもこの島の特徴で、とくに島の北部には東西にわたり山脈がそびえ立っているのが見られます。また、山の近くに温泉が湧き出ている地域もあります。
バリ島全体は自然が豊富ですが、その理由の一つにスバックという水利組織が挙げられます。これは水田の所有者と耕作者によって作られた組織で、人工により供給された水を平等に分配するための仕組みです。900年という長い歴史を持つこの水利組織が島民たちの生活を豊かにしてきました。このような水系と火山によって肥沃な土壌が形成されているため、バリ島は農作物が育ちやすい自然環境となっています。

紀元前2000年頃から、バリ島にはオーストロネシア語族と呼ばれる人々が在住していました。彼らは、台湾・東南アジアや太平洋にある島々・マダガスカルを中心として広がる語族です。紀元前1世紀になるとインドや中国からの影響を受けて新しい文化を取り入れるようになり、バリは発展を遂げました。
10世紀までの間にワルマデワ王朝が築かれ、その後約400年間続くことになりますが、1342年にマジャパヒト王国の侵攻によって長い歴史に幕を下ろしました。それからはしばらくマジャパヒト王国が支配する形となりますが、16世紀に入ってからはイスラムの勢力によって衰退していきます。
17世紀以降は、マジャパヒトが政権を握っていた時代の貴族たちの末裔が現れて勢力を持つようになり、クルンクン王国・バドゥン王国・カランガスム王国を始めとして全7つの小国を立ち上げました。こうしてバリ島は、互いに対立しながら実力者同士が競い合う「群雄割拠」の時代へと突入していきます。
19世紀になると戦争が各所で起こり、1908年にはクルンクン王国が滅びます。その後はオランダ植民地時代に入りました。
大地震やインフルエンザといった災害に襲われるといった過程を経て、神への儀式を粗雑にせず行うようになっていき、現在に至ります。

サバナ気候であるバリ島は、気温が極端に下がることはなく、寒い時期であっても最低平均気温は約24度となっているため、1年を通して暖かいのが特徴です。10月から3月にかけては雨季、4月から9月にかけては乾季というように、1年の中で降水量の多い時期と少ない時期が分かれます。ただし、雨季であってもそこまで多くの雨が降るわけではなく、スコール時に少し降る程度です。さらに乾季になるとほとんど雨が降らなくなってしまうため、バリ島ではしばしば水不足の問題が起こっています。
このような気候を持つバリ島では、サバナ気候の地域特有の動植物も多く見られます。とくにムクドリ科の鳥である「カンムリシロムク」は、バリ島の北西部にしか分布しない貴重な存在です。体長は約25cm、全身が白い毛で覆われているこの鳥ですが、現在ではその数が激減しており、絶滅危惧種とされています。島にはその他にもさまざまな鳥や、イグアナなどの爬虫類、猿、リスといった動物などが生息しています。日本では見られないような動植物を多く見ることのできるバリ島では、自然の中を散策するだけでも楽しむことができるでしょう。